岩の力学連合会
JSRM

 

規約・規定

「将来構想検討特別委員会」最終報告

平成14年度第1回理事会で報告・承認


理事長挨拶


本報告書は、平成14年5月30日(木)の理事会において設置された「将来構想検討特別委員会」が、岩の力学連合会のISRM日本NG(ナショナルグループ)としての在り方と将来構想に係わる問題について集中審議を行い、具体的提案(将来計画)をまとめたものです。

委員会設置の趣旨に明記されていますように、「岩の力学研究連絡委員会」の設立から39年、「岩の力学連合会」への名称変更から24年を数え、この間に、会員各位の献身的なご努力により、第8回ISRM国際会議の日本開催など、本連合会はNGとしての国際的責任をはたすとともに、岩の力学の国際的な振興と発展に貢献すべく、組織4団体の連携により様々な事業を展開してきました。しかしながら、本会を取り巻く社会環境は急速に大きく変化しつつあり、平成13年度に開催した5回に渡る会員懇談会では、最近の社会・経済環境の変化を看過して現在の体制のままで進むならば、21世紀における新たな社会的要請に充分に応えられなくなるばかりでなく、ISRM会員の多様な国際的活動の支援・推進、国内で開発された技術の国際基準化の促進など、岩の力学連合会の目的を達成するための事業展開が困難になる事態も予想されるとのご指摘とともに、岩の力学連合会の在り方を根本的に見直すべき時期にあるとのご意見が多数寄せられました。これらの社会・経済環境の変化を踏まえたご指摘とご意見を真摯に受け止め、危機的とも言える現状の打開に向けて、理事会として責任ある対応を迅速に行うために、本委員会が理事会の下に設置されました。

平成14年度末までに具体的提案を行うために、委員各位には貴重な時間を割いて集中審議に加わって頂き、貴重な建設的なご意見を多数頂戴しました。理事長としてここに厚く御礼申し上げます。と同時に、本報告書にまとめられた提案(将来計画)の実現に向けて、会員各位のご支援とご協力をこころからお願い申し上げます。

平成15年3月13日(木)           
岩の力学連合会理事長 菅原 勝彦


まえがき


岩の力学連合会を取り巻く環境は急速に大きく変化しつつある。国内においては、岩盤プロジェクトの停滞に伴い、「岩の力学」への興味・期待が急速に減少しつつあり、新たな学術研究の展開と技術課題の解決にチャレンジする研究者・技術者の連携強化、並びに次世代を担う若手研究者の育成に貢献できる「岩の力学連合会」の再建が緊急な課題となっている。また、海外においては、ISRMの会員減少が続き、現場技術者にも魅力ある国際学会への脱皮が強く求められている。このような内外の岩の力学を取り巻く状況の変化を踏まえ、21世紀における新たな社会的要請に応えるために、本委員会は、理事会の要請を受け、次ページの委員構成で岩の力学連合会の将来構想について検討を重ねてきた。

本報告書は、上記の検討に基づき、岩の力学連合会の在り方、組織改革、将来計画に加えて、必要な定款の改定、新たなナショナルグループ(NG)事業計画等をその実施方策と合わせて提案するものである。しかしながら、本委員会が時限で、平成14年度末までに結論を出さねばならなかった関係で、未検討の問題が多数残された。残された課題については、今後、理事会が責任をもって継続審議を行い、迅速な解決にあたられることを期待する。

将来構想検討特別委員会委員長 谷本 親伯


  将来構想検討特別委員会の開催記録

  1) 

1回委員会

平成14年 8月 7日(水)

11:00-14:10 資源・素材学会会議室

  2) 

2回委員会

平成14年 9月13日(金)

13:00-17:00 資源・素材学会会議室

  3) 

3回委員会

平成14年10月25日(金)

12:00-16:30 資源・素材学会会議室

  4) 

4回委員会

平成14年12月11日(水)

13:00-18:00 資源・素材学会会議室

  5) 

5回委員会

平成15年 1月31日(金)

13:00-17:00 資源・素材学会会議室

  6) 

6回委員会

平成15年 2月18日(金)

10:00-12:00 資源・素材学会会議室

 

委員構成

委員長

谷本 親伯

理事 (大阪大学)

兼幹事

芥川 真一

正会員 (神戸大学)

 

大西 有三

地盤工学会岩盤工学研究連絡委員長 (京都大学)

 

金子勝比古

幹事長 (北海道大学)

 

齋藤 敏明

日本材料学会岩石力学部門委員長(京都大学)

 

菅原 勝彦

理事長 (熊本大学)

 

高津 浩明

正会員 (東京電力(株))

 

田中 荘一

理事・国際技術委員長 (応用地質(株))

兼幹事

谷  和夫

専門幹事 (横浜国立大学)

 

永山  功

専門幹事 (土木研究所)

 

畑  浩二

専門幹事 (椛蝸ム組)

 

福井 勝則

専門幹事 (東京大学)

 

松木 浩二

資源・素材学会岩盤工学部門委員長 (東北大学)

 

水谷 敏則

土木学会岩盤力学委員長 (先端建設技術センター)

 

山口  勉

理事・企画委員長 (産業技術総合研究所)

 

山冨 二郎

副理事長 (東京大学)

 

 

(あいうえお順)


目次

1. 社会的背景

2. 岩の力学連合会の現状と課題

3. 将来構想に関する提言

4. 面の組織改革 ー 常任理事会の新設

5. NG事業に関する提案
  5.1 国内シンポジウム事業
  5.2 国際シンポジウム事業
  5.3 創造的提案推進事業
  5.4 表彰制度の創設
  5.5 国際情報発信事業
    5.5.1 電子ジャーナルの創設
    5.5.2 「RockNet」の開設

6. 基金運用に関する提言

7. 事務局一元化について

8. 今後の課題


1.社会的背景

岩の力学連合会は、岩の力学に関する国内研究活動の相互連絡を行うとともに、日本の岩の力学にかかわる機関を代表してISRMに加盟し、岩の力学の国際的な振興と交流を図り、わが国および世界の岩の力学の発展に寄与することを目的としている(規約による)。21世紀を迎えた岩の力学連合会が、この目的達成に向かって、組織4団体の強い連携の下で、広範な分野で整合性のある積極的で適切な事業を行っていくためには、様々な事業が全体的な将来計画に裏付けられていることが必要である。変化の激しい現代社会にあって、長期的な計画を確定することは容易ではないが、本報告書は、十年余り先の「岩の力学連合会」の在り方を視野において、かかる必要に応えようとするものである。

企業活動の国際化と競争は、広範で急激な技術発展を生み出すとともに、日本社会に深刻な変化を求めている。かつての日本社会を支えた生産技術における優位性は、経済活動のグローバル化の中で急速に消滅しつつあり、かなりの期間にわたって経済的・財政的な困難の継続が予想される。こうした中で、今後とも岩の力学連合会が賛助会員の経済的支援を受けてNG活動を発展させるには、岩の力学連合会が長期的・短期的にいかに社会に貢献するのかを明示することが求められている。社会貢献の明示とその検証の要求に応えるには、岩の力学連合会の目的に基づき、特色あるNG事業を目に見える形で展開することが必要である。

岩の力学の魅力は、我が国において、かつてなく急速に萎みつつある。地下発電所大空洞建設などのように岩の力学の発展に寄与した大型プロジェクトが減少し、一方で高レベル核廃棄物の地層処分を始めとする次世代プロジェクトは学際的で総合的な科学技術の創生を必要としている。このような社会的要請の変化に伴って、賛助会員企業に止まらず、わが国の大学においても岩の力学に関する若手研究は停滞気味になっている。このような状況に応えて、組織4団体の強い連携の下で様々なNG事業を展開し、学際的な学会交流の活性化を通して次世代の科学技術を担う若い研究者の育成を確かなものにすることが求められている。

また、岩の力学は国際化の時代を迎えつつある。先進国のインフラ整備はピークを過ぎつつあり、発展途上国ではインフラ整備が活発化しつつある。これに対応して、岩の力学に対するニーズは、発展途上国で急速に増加しつつある。このような変化を伴う国際化は、岩の力学連合会の知的な力量を問うものであり、今回の将来像をめぐる議論の昂揚は会員の期待の高まりとともに、危機感の沸騰を示すものに他ならない。こうした中で岩の力学連合会に求められるのは、常に世界をリードし続けることのできる研究の推進、並びにそれと結びついた若手研究者の育成である。また、世界から注目される情報拠点としての機能をより一層強化することが求められている。

また、情報通信技術の飛躍的な発展は、会員相互の交流手段を変えようとしている。インターネットを用いた多様な形態の学会活動を伴いつつ、人的交流と情報交換が国際的に広域的になされる時代が始まっている。このような新しい条件を積極的に活かしつつ、岩の力学連合会の将来像を展望する必要がある。

上述した背景を踏まえ、本委員会は、岩の力学連合会の目的に適った社会貢献の明示と検証、組織団体の連携強化、特色あるNG事業の展開、学会を跨る学際的な事業展開、国際的情報拠点の構築、インターネットの積極的活用などの視点から、若手研究者がライフワークとして取り組むことが可能な岩の力学の将来像を追求する。すなわち、「総合的な岩盤科学技術」の創生と体系化を視座に据え、活力ある組織の構築を目標とする。


2.岩の力学連合会の現状と課題

理事会は、岩の力学連合会が最近の社会・経済環境の変化を看過して現在の体制のままで進むならば、21世紀における新たな社会的要請に充分に応えられなくなるばかりでなく、本会の目的を達成するための事業展開も困難になる事態が近く起こるとの、危機的な現状認識をもって、本委員会の主な審議事項をつぎのように定めた。すなわち、現状分析に基づき、本会の目的から見た見直しの方向性、および社会的要請から見た見直しの方向性について検討するとともに、事務局固定化、基金活用計画などの懸案事項について具体案を審議する。また、ナショナルグループとしての将来構想に係わる問題として、岩の力学の新展開に最も相応しい全国組織の再構築、会員が活動し易く連携できる魅力的運営、賛助会員に魅力がある多様な事業展開、その他、最小の負担で最大の効果を生み出す将来構想について審議する。

将来構想を検討する上で、財政基盤に関する現状分析は極めて重要である。岩の力学連合会の年間収入は、組織団体分担金(土木学会5万、(社) 地盤工学会5万、 (社) 資源・素材学会5万、(社) 日本材料学会3万で18万円)、正会員からの会費収入(300名x4,000=120万円)、および賛助会員からの会費収入( AA級18万、A級15万、B級12万で約880万円)からなり、年間の事業予算(約1,000万円)とほぼ同額である。また、事業予算の内、固定的な経費は事務局経費300万円とISRM本部への送金200〜250万円である。このように正会員からの会費収入が事務局経費の半分にも達しておらず、かつ事業予算の約90%が賛助会員からの会費収入に依存している現状は、極めて変則的である。

加えて、岩の力学の魅力が、我が国における大型プロジェクトの減少とともに、かつてなく急速に萎みつつあることから、ここ数年の間に賛助会員数の大幅な減少が避けられないと危惧される。その結果として、賛助会員からの会費収入が減少すると、事業資金の確保はたちまち困難になる。このような最近の社会・経済環境の変化から見て、本会の財政基盤は極めて脆弱である。

上述の財政基盤の変則性と脆弱性を解消するには、正会員数の増強、事務局経費の削減等に有効な施策を早急に立案・実施するとともに、財政基盤を抜本的に見直す必要がある。これには、後述するようなNG事業によって会員サービスの充実を達成するとともに、会費の増額・適正化、学生会員制度の新設、会務処理の合理化・簡素化などの施策を検討する必要がある。

岩の力学連合会は、上記の年間事業費とは別に、基金約2,800万円を有する。この基金は、規約に定める基本財産として総会で議決されたものではなく、将来のISRMシンポジウム等の事業の準備資金として認識されてきた。前述したように会員サービス事業の充実等によって活性化を追求するには、現有基金の事業準備資金としての性格に配慮しつつ、基金の位置づけを明確にする必要がある。具体的には、現有基金の一部を活性化事業の遂行に支弁できる運用財産とし、残りを規約に定める基本財産とするなど、本会が危機的状況を脱出するために、効率的かつ適正な基金運用を可能とすべきである。

つぎに、本会の目的達成の視点から見ると、現在の事業展開は極めて限定的であり、学会を跨る組織としての特色が十分に活かされていない。したがって、前章で述べたように「総合的な岩盤科学技術」の創生と体系化を視座に据え、現在の危機的状況を脱出するために、学会を跨るNG事業を積極的に展開する必要がある。すなわち、組織団体と関係学協会から事業調整を付託された連合会組織の特色を活かした個性的な事業展開が必要である。具体的には、個々の組織団体が単独では完全にカバーできない学際領域における事業の活性化が求められている。たとえば、緊急性・発展性のある総合的テーマを精選し、人材を広く結集したシンポジウムを主催するなど、学会を跨るNG事業を組織団体との強い連携のもとで展開できる体制を緊急に再構築することが求められている。また、若手研究者の育成・支援に有効、かつ責任ある体制の整備が求められる。若手研究者、あるいはグループによる先端学際研究交流セミナーの開催など、若手会員の創意による提案事業を経済的に支援できるシステムの構築が求められている。

また、インターネットを活用した情報拠点としての機能整備が求められている。すなわち、岩の力学ニュースの発行、ホームページの拡充・更新などに加えて、インターネット上で会員がリアルタイムに情報交換できる共用的な場の提供、研究成果の迅速な海外発信機能をもつ電子ジャーナルの開設とその段階的充実など、最小の負担で最大の効果を生み出す新規事業を立案・実施する体制を緊急に構築することが求められている。

つぎに、社会的要請から見ると、将来的に法人化を目指し、組織としての社会的責任の明確化とその検証が求められている。当面、「総合的な岩盤科学技術」の創生と体系化を視座に据えた「岩の力学連合会」としての社会貢献、人材育成のビジョンを明確にするとともに、会の名称変更、役員選挙(公選)の実施などの検討を通して、岩の力学の新展開に最も相応しい全国組織の再構築、会員が活動し易く連携できる魅力的運営、賛助会員に魅力がある多様な事業展開、最小の負担で最大の効果を生み出す将来構想等について、継続性をもって審議する機動的組織の構築が緊急な課題である。

事務局固定化の問題は極めて重要である。現在、土木学会に年間150万円、持ち回りの幹事学会に年間150万円、合わせて300万円の事務経費を支出している。土木学会は、会員の入退会事務、名簿管理、会費の徴収・管理・本部への送付、本部からの通信物の役員・委員長への配布などが主な業務であり、幹事学会は、総会・理事会・専門幹事会・委員会に係わる事務、編集委員会の編集支援、会員への岩の力学ニュースの配布などの一般会務を担当している。本委員会は、財政基盤を強化するために、事務局経費削減が不可欠であるとの認識で、事務局一元化の方策について多角的な検討を行った。この問題の重要性に鑑み、背景と問題点、並びに一元化の方法についての検討結果を7.で詳述する。


3.将来構想に関する提言

将来像を展望するとき、独立した学会の設立運動との関係を検討し、「総合的な岩盤科学技術」の創生と体系化を目指すNG事業体としての適格性を明らかにすべきである。

独立学会設立の必要性は、本委員会が提案する「総合的な岩盤科学技術」の創生と体系化を単独に目指そうとするものであり、既存の学会、並びに岩の力学連合会が事業主体としての適格性を欠くとの考え方に立脚している。岩の力学連合会については、複数の学会の連合で、学会間の調整とISRMへの受動的対応を主な役目とした過去から、残念ながら主体的に企画し、外に向かって提案を行い、リーダーシップをとることに無理があると総括した結果である。このような独立学会設立運動の波紋が増大して、今回の将来構想の議論にも影響を及ぼしている。

上記の指摘は、岩の力学連合会の在り方に関する提言の一つとして、真摯に受け止められねばならない。また、多くの会員が、将来の「岩の力学連合会」に対して、一定の主体的な企画力と国際学会への能動的対応を期待していると理解すべきである。したがって、「総合的な岩盤科学技術」の学術団体として、岩の力学連合会が広く認められ、会員の総力が結集されるには、組織4団体を要とする関連学協会の強い連携を基盤として、学会交流の将来構想・将来計画を定め、その実現に向けて様々なNG事業を積極的に展開する必要がある。

「総合的な岩盤科学技術」は、組織団体が等しく目指しているものであり、学会を跨る学際的なアプローチによってはじめて実現できるものであるから、岩の力学連合会への結集は極めて妥当なものである。しかしながら、会員の多くは組織団体の主要なメンバーであり、それぞれの学会の目的達成に向かって活動している現実も十分に考慮すべきである。したがって、岩の力学連合会という独立学会への結集を求めるのではなく、関連学協会の連携による企画力強化を制度的に保証した上で、「総合的な岩盤科学技術」の創生と体系化に貢献するNG事業体としての自覚をもって、将来構想を検討すべきであると考えられる。

上述の現状認識に立ち、本委員会は、つぎのように提言する。

1)

岩の力学連合会は、組織団体を要とする関連学協会の広範な連携を基盤とした会員の結集によって、組織団体とともに「総合的な岩盤科学技術」の創生と体系化を目指す。このために必要なNG事業を積極的に計画的に展開し、我が国および世界の岩の力学の発展に寄与する。

2)

組織団体の連携を更に強化するために、理事会に常任理事会を新設し、将来構想・将来計画を継続的に審議・立案する。

3)

必要とされたNG事業を計画的に実施するために、現有基金の運用を検討する。

4)

事務局業務の簡素化を図り、事務一括委託(事務局一元化)による事務経費の削減を実現し、日本NG の事務局が学会の回り持ちと言う変則体制を速やかに解消する。

5)

将来、組織団体と連携・協力して、法人化を目指した検討を行う。

上記の提言をまとめるに当たり、常任理事会、NG事業、基金運用、事務局一元化などの重要な事項について、個別に方向性を検討した。その内容は以下の各章に示す。


4.当面の組織改革 - 常任理事会の新設

常任理事会の設置は、組織団体の連携強化を組織的に担保するための施策である。理事会の機動的運営が困難なことから、理事会に付託されている将来構想・将来計画などの重要な戦略的な施策の立案と会務評価、並びに組織団体との間の事業調整の円滑・迅速な実施が滞りがちであったとの認識に基づき、常任理事会の設置を提案する。

したがって、常任理事会には迅速な決定を可能とするために必要な権限を与えるとともに、理事長、副理事長、幹事長、日本から選ばれたISRM本部役員に組織4団体の代表者(理事)を加えた構成が不可欠である。

常任理事会が将来構想・将来計画などの重要な戦略的な施策立案を担当するのに対して、専門幹事会は年次計画の立案・執行などの会務を総括する。また、各種委員会は専門幹事会の下で施策執行を担当する。

上記の提案は、当面、無用な混乱を回避するために、改組を最小に止めるものである。このような僅かな改革によって、将来構想・将来計画の実現が可能になることはない。将来構想・将来計画などの重要な施策に関する機動的な審議を可能にするに過ぎない。しかしながら、常任理事会が期待された機能を発揮するならば、これを核として組織団体の連携強化が進むとともに、後で提案する学会交流のNG事業の円滑な執行が実現するものと考えられる。その正否はISRM会員たる常任理事の情熱に係わっている。常任理事会は、長期戦略の司令塔であり、その責任は重い。

常任理事会に付託されるべき戦略的な施策立案の中には、「総合的な岩盤科学技術」、すなわち岩の力学の新展開に必要な広範な学際連携のための改組が挙げられる。この問題に関しては、組織団体の数を増やす方法、組織団体の他に協力団体を設ける方法など、多様な対応がある。また、組織団体と協力団体は、理事などの選出母体でもあるから、この問題は当然に理事・専門幹事の数、並びに選出母体の見直しと不可分である。さらに、理事長、副理事長、幹事長を幹事学会の持ち回りとする現在の役員選出方法についても検討が必要である。

本委員会としては、拙速な大規模改組は労力多くして成果が乏しいから、常任理事会が責任を持って継続的に将来計画を審議し、順次、必要な改革を行い、加えて、会の名称変更により「総合的な岩盤科学技術」の方向性を明示し、広範な学際連携の中心としての基礎を構築することを提案する。


5.NG事業計画に関する提案

5.1 国内シンポジウム事業

日本のISRM会員が一堂に会して交流を深め、最新の情報交換を行う場を提供するNG事業は、本会の目的からみて、不可欠なものである。この趣旨から、「岩の力学国内シンポジウム」を原則3年間隔で開催している。また、組織団体はそれぞれの学会の目的達成のために特色ある学会活動を展開しており、土木学会は、毎年、「岩盤力学シンポジウム」を開催している。また、西日本岩盤工学会を始めとする多くの任意団体等が、様々な国内・国際シンポジウム、並びに研究集会・講演会・研修会等を開催していることは周知の通りである。このように年々回数を増しているシンポジウムは、日本における岩の力学研究、並びに周辺学際研究の活性を示すものであるが、一方で関係者と参加者の負担増を結果しており、一部会員からはシンポジウムの開催回数等についても適正化が求められている。

上記の背景を踏まえて、「国内シンポジウム主催事業」の在り方について検討した。その結果に基づき、本会の目的達成のため「岩の力学国内シンポジウム」を早急に見直すこと、組織団体との連携強化の基本方針に立脚して、組織団体とともに新たな国内シンポジウムを構築することを提案する。

新たな国内シンポジウムの創生提案は、岩の力学連合会のみが組織4団体および関連学協会に向かって提案できるものである。その目的は、「総合的な岩盤科学技術」の創生と体系化に向かって、複数の学会に分散しているISRM会員が一堂に会して交流を深め、最新の情報交換を行う場を提供することであるから、毎年1回開催が望ましい。と同時に、関連学会に魅力ある方式での開催が求められる。さらに、それが組織団体による独自開催の中止、あるいは既存シンポジウム等の廃止を求めるものであってはならない。

具体的には、各学会の主体性尊重を基本とした国内関係シンポジウムの統合による新たな国内シンポジウムの創生を提案する。各学会の主体性を尊重した開催方式としては、たとえば、分科会方式がある。各学会が担当する分科会の企画・運営に個々に責任をもつことにより、各学会の目的に合致した分科会運営が可能となり、かつ複数の学協会が連携協力して次世代の課題に焦点を絞った魅力ある集会を企画・実施することも可能になる。当然に、岩の力学連合会は組織団体と連携して、会員に魅力ある分科会を自ら催すことが求められる。上記の分科会方式を採用する場合には、その総体を束ねるコンセプトの明示が重要であるとともに、窓口の一元化、会務負担と会費徴収、経費負担と利益配分など、多くの実施上の問題点を洗い出し、技術的・財政的検討も行って万全な体制を構築する必要がある。

以上のように、「各学会の主体性尊重を基本とした国内関係シンポジウムの統合による新たな国内シンポジウムの創生」という方向性を提案するが、具体的なプランを提示することはできなかった。

今後、組織団体への提案、理事会・総会の議を経て、常任理事会と企画委員会が協力して、具体的なプランを作り、早期に実施されることを期待する。

5.2 国際シンポジウム事業

国際会議の主催、並びに共催・後援は、本会の目的から、組織団体との連携の下で、積極的に計画的に実施すべきNG事業である。

現在進行中の主催事業としては、第3回ARMSがある。これはISRMのInternational Symposiumとして、平成16年11月に京都で開催するNG事業であり、第3回ARMS準備委員会により計画通りに準備が進んでいる。また、第3回ARMS準備委員会は資源・素材学会を通じて科研費補助金に開催補助を申請中である。

3回ARMSの事例から明らかなように、本会主催のISRMの国際シンポジウムおよび国際会議については、基金から準備資金の支出が慣例的に行われているが、これに関する規定はない。したがって、基金の運用に関して厳正な規定を設けるとともに、基金の運用等によりISRMの国際シンポジウムおよび国際会議の事業準備資金に対する保証を確かなものにすることが求められている。

 上記の背景から、現有基金の一部を取り崩して、ISRMの国際シンポジウムおよび国際会議を主催する事業に支弁するシステムの構築を提案する。この基金に係わる問題については6.で具体的な提案を行う。

5.3 創造的提案推進事業

平成16年の第3回ARMSに先立って、平成15年の11月には熊本で第3回岩盤応力国際シンポジウムが、西日本岩盤工学会により開催される。これは、ISRMの試験法委員会との共催であり、本会も共催する国際シンポジウムである。このようなISRMに関係する国際シンポジウムに加えて、将来、会員が発議・主催する大小の様々な国際シンポジウム、あるいは国際ワークショップが日本の各地で計画・実施されることは、大いに歓迎されるべきことである。また、本会はその目的からこれらの様々な形態の国際的集会の実現に向けて人的・財政的支援を行うべきである。

上記の視点から、国際シンポジウムを始めとする会員の創意に基づく創造的な様々な事業提案に対して、人的・財政的支援を行う創造的提案事業推進を新たなNG事業として提案する。この事業に関しても、現有基金の一部を取り崩して、事業推進を可能とする措置を提案する。

提案事業の採否、並びに財政的な支援方法については、常任理事会が審議するものとし、事業の実施は提案した会員、あるいはグループが責任を持って行うことを基本とする。

5.4 表彰制度の創設

創造的提案推進事業のように、我が国のISRM会員の主体的・創造的活動をプロモートするNG事業は、本会の目的に合致しているから、財政が許す範囲で、積極的に展開すべきである。組織団体を始めとする多くの学会がすでに実施している学会表彰は、上記の趣旨から本会でも有意義なものであり、かつ実施可能である。

上記の視点に立って、表彰制度の在り方について検討した。それに基づき、本会に相応しい特色ある表彰制度として、組織団体のご協力の下で毎年発行している「岩の力学」を活用する表彰制度を提案する。

具体的には、「岩の力学」に収録された論文・報告を表彰対象とし、各年度の始めに表彰委員会を設けて選考を行う。この場合、岩の力学連合会の表彰は学会の枠を越えたものとなる。また、組織団体における表彰が学術部門に重点があることを考慮して、本会が技術部門に対する表彰を手厚く行うことを提案する。これは、賛助会員に魅力があるNG事業の展開という視点からも求められる。

表彰内容の開示は、本会の目的からみて、積極的に行われねばならない。このためには、後述する電子ジャーナルやホームページの活用が考えられる。たとえば、受賞者に表彰内容に関する執筆等をお願いして、電子ジャーナルに掲載することも考えられる。

表彰制度の創設に当たっては、規約の改定が求められる。また、表彰制度の設計と実施を担当する部署の明示が求められる。これに関しては、常任理事会が制度の骨格設計を担当し、専門幹事会が必要な規約の整備を行い、平成16年度から表彰委員会を年度ごとの委員会として設置し、執行に当たることを提案する。

5.5 国際情報発信事業

我が国における科学技術の研究成果を広く海外に発信するNG事業は、本会の目的からみて、不可欠なものである。この趣旨から、今までに、本会に付託された「国際会議論文審査」の厳正化・適正化に努めるとともに、「ホームページ」を開設・更新してきた。また、古くは「Rock Mechanics in Japan」を発行した。組織団体は個別の目的達成のためにそれぞれ特色ある国際情報発信事業を展開しており、地盤工学会は、欧文誌「Soil & Foundation」を発行して、世界的に高い評価を受けていることは周知の通りである。

上記の背景を踏まえて、また、インターネットの積極的活用の方向性から、「国際情報発信事業」の在り方について検討した。その結果に基づき、本会の目的達成のため「電子ジャーナル」の創設、並びに「RockNet」の開設を提案する。

5.5.1 電子ジャーナルの創設

電子ジャーナルは、通常の欧文誌と異なり、比較的に少ない経済的負担で製作が可能なことから、事業資金に余裕がない本会の情報発信方法として魅力的である。企画委員会の調査によると、科学技術振興事業団が提供している「J-STAGE」は無料であり、現在92誌が利用しているなどの実績から信頼できる。また、電子ジャーナルのみの利用も5誌あり、数年先でも無料であることが判明した。ただし、技術的には、「参考文献のTag付け」についての技術習得などが求められる。

上記の調査結果を踏まえて、複数の会員に対して非公式に「電子ジャーナル」の可否、並びに編集担当についてご意見を伺った。その結果、積極的な賛同を頂くことができた。これらに基づき、本委員会では、「電子ジャーナル」の方向性について検討した。その結果を要約すると、つぎのようである。

本来の電子ジャーナルは、世界からの投稿論文を査読して、独立学会としての論文誌として提供されるものであり、一般に自由に閲覧できる部分と会員のみが閲覧できる部分で構成される。しかしながら、岩の力学連合会は独立学会として論文誌を会員に配布することを目的とせず、我が国の高いレベルの研究を広く発信することによって岩の力学の国際的な振興と交流を図り、わが国および世界の岩の力学の発展に寄与することを目的としているから、自由に閲覧可能な電子ジャーナルが相応しい。

また、岩の力学連合会の電子ジャーナルが、世界のISRM会員を始めとする多くの研究者・技術者に受け入れられるには、高名な方々からなるEditorial Boardが不可欠である。さらに、投稿から論文掲載に至るまでの時間が短いなど、投稿者に魅力ある編集方針で経営されることが求められる。留学生および博士学生の増大等を背景として、印刷物に対する要求が潜在していることから、印刷版の限定頒布、別刷の発行も不可欠な要素として求められる。なお、表彰制度の項で述べたように、電子ジャーナルは表彰の対象となった業績内容の開示にも活用できる。また、賛助会員からの要望として、海外論文の紹介、アブストラクトの掲載、技術紹介などが寄せられていることを付言する。

電子ジャーナルの創生に当たっては、担当部署の選定が重要な問題であるが、関連の深い編集委員会がニュースの発行等の通常業務で繁多なことから、別に電子ジャーナル創生委員会(仮称)を設置することを提案する。また、電子ジャーナル創生委員会(仮称)は、電子ジャーナルのEditorial Board Memberとし、その構成員は日本を代表する指導的学者と若手研究者から選任する。その選任は常任理事会が行う。また、電子ジャーナル創生委員会(仮称)が年度ごとに提出する「電子ジャーナルの発行計画とその段階的充実計画」を常任理事会で審議・検討し、必要な財政的措置を行うこととする。

電子ジャーナルの発行は、組織団体における既存の欧文誌、あるいは、将来の欧文誌発行と競合することが危惧される。この点については、組織4団体の代表者が構成員である常任理事会において、事業調整を図る必要がある。たとえば、欧文誌を発行している組織団体の正会員から電子ジャーナルに投稿があった場合、学会誌への投稿を奨め、電子ジャーナルには学会誌に掲載されたアブストラクトのみを転載するなどの措置を予め決めておくことが求められる。

5.5.2 「RockNet」の開設

インターネットを積極的に活用して、広く情報交換の場を提供するNG事業が、「RockNet」の開設とその段階的充実・運用である。たとえば、岩の力学連合会のホームページから、公開のプラットホーム「RockNet」に入り、会員間の自由な議論への参加、必要とする情報の提供依頼、直面している課題解決への協力依頼、新しい研究成果の宣伝、共同利用できる実験設備の紹介など、様々なホットな話題に迅速にコンタクトできる検索機能付きのシステムを提供する。このシステムは情報技術の発展とともに成長するところに特徴がある。

このNG事業は比較的に少ない投資でスタートできるが、システム構築・改良、維持・管理、並びに会員に魅力ある運用を図るために、担当者に大きな時間的・金銭的負担を強いることが危惧される。したがって、将来のシステム総体を展望しつつ、可能な部分から順次、計画的に構築していくことを提案する。本事業は、現在進行中のISRM本部の学会電子化事業と連動させて推進することを提案する。担当部署は、現在、編集委員会がホームページの管理を行っていることなどを考慮して、その下にワーキンググループとして設置し、そのリーダーを専門幹事にすることを提案する。


6.基金運用に関する提言

事業に必要な資金の全てを一般会計から支弁することは困難であると予想される。そこで、事務経費削減等を含めて一般会計の全般的見直しを行い、各年度の事業計画の適正化を図るとともに、現有基金の一部を取り崩し、事業に支弁できるシステムの構築を提案する。

現有基金(約2,800万円)は、設立当初の財産目録中基本財産の部に記載された財産、基本財産とすることを指定して寄付された財産、および総会において基本財産に繰り入れることを決議した財産のいずれでもでないが、慣例的に、本会の事業準備基金との認識で取り扱われてきた。基本財産は、定款にあるように、処分し、またが担保に供してはならない財産であり、事業遂行上やむを得ない理由があるときは、総会の議を経て、その一部に限り処分しまたは担保に供することができる財産である。

したがって、現有基金をNG事業に支弁するには、総会における議決が必要である。このとき、まず、現在の基金の一部を基本財産に繰り入れることを議決し、今後、それを基本財産として管理することとする。そして、残りの基金を運用財産とする。ここに、運用財産とは、基本財産以外の資産であり、本会の事業遂行に要する経費に支弁できるものである。つぎに、使途を明示した運用財産としての新しい基金の設立を総会で議決し、その管理・運用規定を理事会が定めて、適正に運用することとする。すなわち、基金の計画的な取り崩しによりNG事業の実施に充当するものとする。

基本財産に繰り入れる金額は、将来の法人化を念頭に置いて、

基本財産 : 1,000万円

とし、これを総会において議決することを提案する。

使途を明示した運用財産としての新しい基金は、前項のNG事業提案に基づくと、つぎの3項目とするのが至当である。

    1)

国際会議主催準備基金

    2)

創造的提案推進基金

    3)

電子ジャーナル創生事業基金


7.事務局一元化について

事務局に係わる問題は、極めて重要であると認識し、多角的に検討を行った。はじめに、背景を説明し、問題点を明らかにする。

本会の設立当初、事務局を土木学会に置き、その業務を土木学会に一括委託した。この一元的な事務局体制の下、土木学会のご努力により、会務の円滑な、かつ適正な処理が実現されたが、土木学会の事務負担が過大であることも次第に明らかになった。その当時から、事務局問題は運営上の重大な問題として審議が重ねられてきた。負担軽減の暫定的な解決策として、業務分割・事務局二元化が提案され、平成7年度から現在の学会持ち回り方式による運営が行われてきたことは周知の通りである。すなわち、海外窓口業務、会員名簿管理等を土木学会が継続して担当し、各年度のNG事業に係わる事務等を資源・素材学会、地盤工学会、土木学会の順番で2年ごとに当番することとなった。この暫定措置は、組織団体間での負担の均一化という視点から受け入れられたものであるが、窓口二元化に伴う混乱、会員名簿管理と会員郵便業務を担当する学会が異なること等に伴う事務処理の煩雑化、二元会計管理に起因する決算業務の混乱など、多くの問題点があることから、上記3学会を一巡する平成12年度までに見直しを行うこととした。しかしながら、問題の複雑さから上記の暫定措置に代わる方法が見いだせないまま、平成12年度を終えることとなった。この緊急事態に対処するため、再度、資源・素材学会、地盤工学会、土木学会の順番で持ち回ることとし、上記学会との間で念書を取り交わし、平成18年度までの事務保証を行った。このような経緯で、現在は2巡目にあり、平成15年度からは地盤工学会が当番(幹事学会)することになっている。

上記の事務局の二元体制は、事務処理の簡素化、事務経費の削減・適正化を困難にしているばかりでなく、理事長以下の役員が会務全般を把握する上でも支障となりつつある。また、監事から事務経費の単純合算による現在の決算の不透明性が指摘され、改善が求められている。したがって、事務局問題は、前述の念書による保証に頼ることなく、早急に解決方策を構築すべきである。

本委員会は、上述した問題点を踏まえて、事務局一元化の方向性で、解決方策を検討した。一部会務(会員名簿管理、会費徴収等)の外部業者委託、関係機関および個人会員への一括委託、組織団体の1つへの一括委託など、様々な方法を取り上げ、個々にメリット、デメリットを具体的に検討した。その結果、いずれの方法を採用する場合においても、事務経費削減によるNG事業資金の捻出という要求を満たすには、事務の合理化・簡素化が不可欠であることが判明した。引き続き行われた、現在の事務委託経費(合計300万円)を削減するための事務の合理化・簡素化に関する検討からは、一元化により経費削減は可能であるとの見込みを得た。

組織団体の連携強化の基本方針から、事務局一元化問題を再び検討し、前述した設立当初の土木学会による一元的な事務局体制の実績を踏まえて、組織団体に一括受託に関する意向調査を行った。その結果、資源・素材学会が受託の意向であることなどが判明した。この調査結果に基づき、本委員会は受託の意向をもつ組織団体に期間を定めて一括委託することにより、事務局問題に一応のピリオドを打つことを検討した。ただし、NG事業資金の捻出のための事務経費削減という条件付きである。

具体的には、事務の簡素化(案)を定め、簡素化した委託業務の内容を明示した上で、再度、組織団体に対して受託意向確認等を行い、受託金額の提示を頂いて、事務経費削減方針に最も合致する金額を提示して頂いた組織団体と委託契約を結ぶことにより、事務局の一元化を実現する方法を検討した。なお、上述の事務局一元化案(組織団体の1つに期間を定めて一括委託)に関する議論・検討は未だ不十分であり、本委員会は、これを一つの可能な選択肢として報告するものである。


8.今後の課題

本委員会は、最近の社会・経済環境の変化を踏まえ、本会の目的から見た見直しの方向性、および社会的要請から見た見直しの方向性について検討するとともに、事務局固定化、基金活用計画などの懸案事項について審議した。しかしながら、時間的制約と問題の複雑さから、全ての課題について具体的な方向性を明快に提示することはできなかった。とくに、財政基盤の変則性と脆弱性を解消するために必要な財務全般に関する将来展望、正会員数の増強を確かなものにする具体的方策、事務局経費の削減等に必要な会務の合理化・簡素化の具体案、NG事業による会員サービスの充実達成時点での会費の増額・適正化、学生会員制度の新設などの施策を具体的に提案するには至らなかった。さらに、社会的要請に応えた法人化計画、「総合的な岩盤科学技術」の創生と体系化を視座に据えた「岩の力学連合会」に相応しい会の名称変更、理事選出母体の精査、役員選挙(公選)の実施などの課題に加えて、事務局一元化の問題についても結論を得るまでに至らなかった。これらの重要課題の検討は、今後も、継続的に求められている。

本委員会は、重要課題解決のための機動的組織として、常任理事会の新設を提案するとともに、活性化に必要なNG事業の骨格を示し、現有基金の運用による事業推進を提案した。これらの提案に従うと、今後、多くの課題の検討が常任理事会に付託されることになるが、その正否は会員の双肩に掛かっていることを強調したい。

最後に、会員の創意を踏まえつつ本会の役員が先頭に立って、課題解決に取り組まれることを強く期待する。  


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