土木学会岩盤力学委員会委員長 京谷 孝史
岩盤力学・岩盤工学に携わっておられる皆様へ
ILC誘致に関して今年3月7日に政府見解が発表されましたが,この度,一般社団法人「先端加速器科学技術推進協議会(AAA)」理事の大西有三先生から,この政府見解に関連する最近の情勢を詳細に説明した手紙(メモ)をいただきました.
私宛の私信ではありますが,極めて重要かつ正確な情報であり,我が国の岩盤力学・岩盤工学に携わる全ての研究者・技術者が共有すべき情報であると考えました.そこで,大西先生に公開の許可をお願いしたところ快諾を頂きましたのでここに掲載させていただきます.是非一読下さい.引き続き皆様と共にILC誘致活動を支援したいと思います.
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土木学会岩盤力学委員会委員長 京谷先生
一般社団法人「先端加速器科学技術推進協議会(AAA)」理事 大西 有三
「最近の国際リニア-コライダー(ILC)誘致活動と関連情報について」
以前よりILC誘致および施設の設置に関する検討等にご協力頂きありがとうございます。
今年3月7日にILCの誘致に関する政府の見解が発表されましたが、それについて賛否両論、様々な見解が出されていて、わかりにくい状況だと多くの方々からコメントをいただきました。この件につきましては、ILCの日本誘致に積極的に関わっている産学協議会AAAの中でも意見交換が行われ、ある程度整理が出来てきましたので、土木が関係している部会(昨年度までのCivil部が改組され、プロジェクト推進部会に変更)を中心に、東京大学の山下先生の話やプロジェクト推進部会幹事会の報告を基に今回の動きをまとめてみました。
この結果を、日頃からILC誘致活動や建設技術的な面でいろいろとご協力いただいている京谷先生を始めとする岩盤工学関係者の方々にあらためてご報告し、ご理解を得たいと思い、「3月7日の政府見解をどのように解釈するか」に関して下記のような解説文書を作成いたしましたので、京谷委員長にお送りいたします。
(1)情勢分析
- 日本学術会議の意見を元に、ILC計画に対する関する政府見解がまとまって、見解要旨が3/7に発表された。表現は明確ではないが、政府がILCに関心を持って国際的な意見交換を継続することが盛り込まれた。今までになかった形であり、財務省および復興相の担当者も入っての調整の結果である。
- 今回、行政的に一歩踏み出した(いままでコメントさえしなかった政府が曖昧な表現ながらILCについてコミットすることを表明)ことが大事で、大変なことであることを理解してほしい。
- 財務省も加わったボトムラインができたことが重要。
- 復興庁が入ったことも意義がある。北上が事実上認められたことになる。
- 発表になった見解要旨を補足して、次の2点の口頭説明があった。①欧州の仏と独をディスカッショングループに引き上げる。②国際ワーキンググループを設置する。
- 政府見解が明確ではなかったため、海外では落胆した人もいる。日本の行政文書は海外ではなかなか理解されない。
- これ(3月7日)から半年の間に日本からアクションがあれば諸外国に信頼される。
- 文科省で省庁連携は初めてのこと。文科省の立場が統一され主体的に変わった。
- 高エネルギー加速器研究機構(KEK)も機構長の元で能動的に動く体制になっている。
- これから半年の間に、米、独、仏との協議をさらに進める。
- 政府間議論では、日仏が重要になる。仏は協議に入っていいと言っている。
- 政・産・学・地域の取り組みで活動を進めてきたが、官が入りこれからは政・産・官・学・地域の取り組みになる。
- 誘致活動を更に深化させるためには、政策議論、海外展開、財源論が大事である。
- ILCの予算は、現状に加えて、次の概算要求ではさらに上げていくのが目標。
(2)文科省と学術会議関連
- 反対を表明している人たちに対して今後も丁寧な説明を続ける。
- 学術会議のマスタープランのヒアリングに選ばれることが重要。今やっているプロジェクト(J-PARC、スバルなど)も年数が経過しているので再度プランを出すことになっている。継続は止めるわけにはいかないので競争が激しい。
- 文科省見解では、学術会議の中で議論することになっており、マスタープランに新規のプロジェクトも入れるように枠を広げることで動きたい。
- 学術会議をクリアするのが大変。マスタープランは6月にヒアリング、9月には大枠決まる。来年2月は最終発表があるというだけで、実際の動きは速い。楽観はできないと考えている。
- マスタープランでなくても、今までの学術会議委員会ではなく、部会とかで議論してもらうようにしたい。
(3)サポート体制
- ILC国会議員連盟(議連)の動きは活発であり、国際協力関係にも強力な支援をいただいている。
- 岩の力学連合会(土木学会、地盤工学会、資源素材学会、材料学会)や冷凍機学会など関連するいろんな学会でサポートしてくれるとありがたい。
- 研究者も政治も経済界も一致して誘致に頑張っているのだから、一致団結して活動を加速することが重要である。
- マスコミ関係や一般市民にも広報活動を継続中
以上のように、ILC誘致活動は活発な動きを継続しています。”ILC Supporters”という一般市民も巻き込んだ支援グループも発足し、著名な文化人や各分野の有力者も入った支援の輪も広がっています。WEB上でSupportersを募っていますので、是非ご参加ください。ILCの実現のためには、世界中の高度で専門的な知識や技術を持つ人たちの協力が必要です。ILC施設および装置の建設には約9年が見込まれており、2030年代初頭の実験開始を考えると、今しっかりとした行動を起こさなければなりません。改めて、関連する土木関係者の皆様のご理解を得て、誘致活動が更に進展するよう、ご支援・ご協力をいただければと思います。
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